2021年度から必修化となった、中学校のプログラミング教育必修化にまつわるあらゆる疑問を解決します。
とはいえ、プログラミングは一部の専門家が扱うものというイメージも強いため
- 中学校でプログラミング学習なんて必要なのか?
- プログラミング学習によって受験勉強がおろそかになるのでは?
といったように中学校での必修化に疑問を感じる方も多いです。
そこで本記事では、中学生のプログラミング学習に関する疑問を、プログラミングスクール運営者の観点で解説します。
具体的には
- 中学生にプログラミング教育が必要である理由
- プログラミング学習によって得られるメリット
- プログラミング学習のポイント
- 中学生におすすめのプログラミング学習方法
といった順番で解説していきます。
本記事をお読みいただくことで
- なぜ中学生にプログラミング教育が必要なのかがわかる
- 中学生のうちから将来の選択肢を増やすキッカケになる
というメリットがあります。
特に、中学生のお子さんを持つ保護者の方で「子どもにプログラミング教育を受けさせるべきか」お悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
なぜ中学生にプログラミング学習が必要なのか?必修化の理由
中学校にてプログラミング教育が必修化となった理由には
- ITエンジニア不足の解消のため
- IT活用による労働生産性向上のため
といったふたつが挙げられます。
それぞれ詳しく解説します。
IT人材不足の解消のため
現在、日本における重要課題はIT人材不足の解消です。
さらに状況は深刻化しており、2030年には最大79万人のIT人材が不足するというデータもあります。
(参照:IT人材需給に関する調査/経済産業省)
IT人材不足の解消を図るためには、人材育成として子どもの頃からのIT教育が欠かせません。
IT活用による労働生産性向上のため
労働生産性を高めるために、ITを活用したデジタル化・オンライン化が進められています。
労働生産性が高まれば、景気が良くなり生活が豊かになります。
しかしながら現在、日本の労働生産性は主要先進7ヵ国の中でワーストが続いています。
注釈:労働生産性とは、労働者一人当たり、あるいは労働1時間当たりでどれだけ成果を生み出したかを示したもの
OECDデータに基づく2019年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、47.9ドル(4,866円/購買力平価(PPP)換算)。米国(77.0ドル/7,816円)の約6割の水準に相当し、順位はOECD加盟37カ国中21位だった。名目ベースでは前年から5.7%上昇したものの、主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いている。
引用:労働生産性の国際比較2020(公益財団法人 日本生産性本部)
さらに、少子高齢化の影響により日本の労働人口も減少の一途を辿っているため、人手不足の解消は見込めません。
ということで労働生産性を向上し日本の景気を上げるために、学生から積極的にプログラミングを学ばせる必要があるということです。
中学校プログラミング教育必修化の目的と内容
中学生のプログラミング学習の目的は、プログラミング的思考力の習得です。
そして、中学生のプログラミング学習内容は
- 技術・家庭科の「情報分野」で行われる
- パソコンの使い方ではなく問題解決の仕方を学ぶ
といったことが挙げられます。
中学生のプログラミング教育は技術・家庭科の授業で行われる
中学校のプログラミング教育は、技術・家庭科の「技術分野」で行われます。
「技術分野」の学習内容は大きく4つに分かれています。
- 材料と加工の技術
- 生物育成の技術
- エネルギー変換の技術
- 情報の技術
プログラミング教育は、上記4項目の中の「情報の技術」で行われます。
元々、「情報の技術」ではプログラミングの基礎学習が行われていましたが、プログラミングを実際に活用できるようになる学習内容に改められました。
プログラミング教育の学習内容について
中学校で実施されるプログラミング学習の内容は
- ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決
- 計測・制御のプログラミングによる問題の解決
といった大きくふたつの学習に分かれています。
例えば、パン屋さんのサイトで「焼き上がりの時間をお知らせする機能」として
- ユーザーがパンの名前を入力すると、
- コンピューターが焼き上がりの時間を自動表示する
といったプログラムを作る学習などが行われました。
中学校プログラミング教育の指導事例を紹介
中学校プログラミング教育の指導事例をふたつ紹介します。
中学校でのプログラミング教育において「具体的な学習内容がわからない」と疑問を感じる方も多いため、実際の指導事例を参考にしてください。
AI(人工知能)画像認識技術で社会問題を解決
宮城教育大学附属中学校では、「AI(人工知能)画像認識技術で社会問題を解決しよう」というテーマでプログラミング学習を行いました。
学習内容としては
- Webカメラによって撮影した画像をPCに読み込み、AIの画像認識技術によって見分けることを体験する
- 身の回りや社会で生じている問題に対して、AIを用いることでどのように課題を設定できるかを検討する
といった体験型学習です。
例えば、「世界の食糧問題を解決するために、食べられる植物を自動で判別するプログラム」など。
授業を通して得られたこととして
- プログラミングやAIによって実現できることの理解
- どのようにプログラミングすれば課題解決できるか論理的に考える力
- AIを用いて解決できる問題を見出し、みずから課題を設定する力
といったことが挙げられました。
(参考:「AI(人工知能)画像認識技術で社会の問題を解決しよう」)
災害時に双方向でやり取りできるプログラム開発
災害時の避難所を想定し「高齢者や車いすの方に避難場所を自動で知らせてくれるプログラム」の開発を課題に設定。
次に、生徒のグループごとにどのようなプログラムにすればよいか検討し、具体的なプログラムを制作しました。
例えば
- 「車いす」というキーワードが送信されると
- 「◯◯に行ってください」と自動で返信する
といったプログラムを検討するなど創造力を発揮しました。
授業を通して得られたこととして
- 身近な問題を題材にすることで、課題解決に向けた活動を自分ごととして捉えられる
- ネットワークの仕組みを学ぶことで、プログラミングに抵抗がなくなる
- プログラミングの試行・検討を重ね修正を繰り返すことで、目的に近づける力
といったことが挙げられました。
(参考:「災害時の避難所を想定して問題を見いだし,ネットワークを生かした双方向でメッセージをやりとりできるプログラムで,課題を解決しよう」)
中学生がプログラミングを学習するメリット
中学生にとってプログラミングを学習するメリットは
- プログラミング的思考力(論理的思考力)が身につく
- 世の中のIT化に対応できる
- プログラミングを使ってアプリやゲームを自作できる
- 大学受験で有利になる
などが挙げられます。
プログラミング的思考力が身につく
プログラミングを学習することで、プログラミング的思考力が磨かれます。
プログラミング的思考力とは「目的を達成するために、順序立てて論理的に考え、結果に導く力」のこと。
文部科学省ではプログラミング的思考力を次のように定義しています。
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、ひとつひとつの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
引用:文部科学省 小学校プログラミング教育の手引(平成30年3月)
プログラミング的思考力は、生活、勉強、仕事などあらゆる場面で役立ちます。
例えば
といったことを自分で考えて実践できるようになります。
大人になってどのような仕事についたとしても物事を細かく分割して計画する力は役に立つため、必須の勉強であると言えます。
大学受験で有利になる
プログラミングを学習することは大学受験で有利になります。
大学入試センターでは、2025年1月に実施する大学入学共通テストで、プログラミングの導入を公表しました。
(出典:日本経済新聞「大学入試でプログラミング出題 25年共通テストで導入へ」)
つまり、現中学3年生(2021年度)が大学受験のときにはプログラミングが導入されることになりますね。
また、すでに一部の大学ではAO入試や推薦入試にプログラミングの実績を認めています。
例えば、プログラミングの腕を競う「国際情報オリンピック」の実績があれば、東京大学・京都大学の推薦入試出願も可能です。
■大学受験でプログラミングの実績として認められる例
■プログラミングの実績・能力を活用できる大学の例
- 東京大学・・・「国際情報オリンピック」の出場・入賞など
参照:東京大学学校推薦型選抜学生募集要項(令和4年度) - 京都大学・・・「国際情報オリンピック」の出場・入賞など
参照:京都大学特色入試選抜要項(令和3年度) - 慶應義塾大学・・・「日本情報オリンピック」本選Aランク、「未踏Jrスーパークリエータ認定者など
参照:総合政策学部・環境情報学部AO募集要項(2022年度) - 早稲田大学・・・「国際情報オリンピック」で一定以上の成績を修めた者
参照:早稲田大学 先進理工学部「特別選抜入学試験」試験概要(2021年度)
将来的な仕事選びにも有利になる
プログラミング学習を通して世の中のIT化に対応し、仕事選びが格段に有利になっていきます。
今や、どの仕事でもITツールの活用は欠かせません。
例えば、介護業界ではIT化が進んでいます。
- スマートフォンやタブレット端末から介護記録を入力する
- 介護スタッフ同士がグループウェアで情報連携を図る
- ICタグにスマートフォンをかざして訪問時間を記録する
しかしながら、ITツールを活用するのはあくまで人。
実際にITツールを活用できる人・できない人では仕事の機会で差が生じていますね。
また、中学生のプログラミング学習は、単にパソコンの使い方やプログラミングを覚えることが目的ではありません。
「目の前の問題をプログラムの力で解決できないか?」
といったようにIT活用を前提とした解決策を考える力が養われます。
中学生がプログラミング学習する際のポイント
中学生がプログラミングを学習する際に、押さえるポイントは
- 無料のプログラミング学習サイトから始める
- わからなくなったときに技術的なことを質問できる相手を見つける
2つのポイントを押さえることがおすすめです。
無料のプログラミング学習サイトから始める
プログラミング学習をはじめたばかりの方は、無料で利用できる学習サイトがおすすめです。
もちろん、有料のプログラミングスクールや学習教材の方が、サポートやコンテンツが充実していることは間違いありません。
特に、はじめのうちは、子どもがどこまでプログラミング学習に興味を持つかわからないもの。
まずは、かんたんな学習からスタートし、徐々にステップアップしていくやり方がおすすめです。
わからなくなったときに技術的なことを質問できる相手を見つける
学習でつまずいたときを想定し、気軽に質問できる相手の存在は非常に重要です。
プログラミングでは、アルファベット一文字のスペルミスだけでエラーとなってしまいます。
特に初心者の場合は、スペルミスひとつ見つけるだけで何時間も掛かることも珍しくありません。
もし、身近に質問できる人がいない場合は「質問サイト・スキルシェアサービス」がおすすめです。
例えば
は現役エンジニアに対して質問が可能です。
実際に、現役エンジニアでも質問掲示板を積極的に活用し、プログラミング力を磨いているためにおすすめです。
中学生におすすめのプログラミング学習方法
「中学生がプログラミングを学習するなら、なにがおすすめ?」とお悩みの方に向けて
- ビジュアルプログラミング
- 学習アプリ・学習サイト
- プログラミング教室
といったジャンル別におすすめの学習方法を紹介します。
初めてのプログラミング学習におすすめ|ビジュアルプログラミング
中学生からプログラミング学習をはじめるなら、ビジュアルプログラミングがおすすめです。
多くの小学校やプログラミング教室で、学習教材として取り入れられています。
初心者向けとはいえ、実現できることが多いのもビジュアルプログラミングの大きな特長。
ビジュアルプログラミングをマスターすれば、最終的には本格的なゲームやアプリケーションの作成も可能です。
Scratch
Scratch(スクラッチ)は、ビジュアルプログラミングの代名詞的な存在です。
世界的にユーザーが多いので、マニュアルやサポートが充実しています。
日本では、NHKの「Why!?プログラミング」の学習教材として利用されています。
(参照:NHK for School「Why!?プログラミング公式HP」)
さらに、インターネットの特長を活かし
- 自分が作成したゲームを公開し世界中のユーザーにプレイしてもらう
- ほかの人が作ったゲームをプレイし、プログラムを参考にする
といったことができます。
Scratchについて、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
→Scratchでかんたんに作れるゲームを紹介【プログラミング入門】
Viscuit
Viscuit(ビスケット)は、日本人が開発したビジュアルプログラミング言語で
- 「コンピューターに何をさせるか」を考える能力を鍛えること
に重点をおいて開発されています。
使い方は「メガネ」と呼ばれるツールを画面上で操作するだけで、子どものお絵かきのような直感的な操作で、ゲームや絵本などを作成できます。
プログラミング言語を独学で学ぶなら|学習アプリ・学習サイト
プログラミングコードを使ったプログラミング言語を学習するなら、学習アプリや学習サイトがおすすめです。
学習アプリや学習サイトを活用するメリットとして
- 学習したいプログラミング言語を自由に選べる
- 費用を掛けずに手軽にプログラミング学習をはじめられる
といったことがあります。
プログラミング言語の数は、現在200以上あると言われています。
数あるプログラミング言語の中で、自分のやりたいことに合わせて習得する言語が変わってきます。
しかし
どのプログラミング言語から学べばいいかわからない
例えば、現在国内のシステム開発の現場で使わているプログラミング言語で最も多いのは、C/C++、次いでJavaScriptです。
また、昨今ではAIの分野で活用が進んでいるPythonも人気です。
(参考:日経XTECH「プログラミング言語実態調査2018」)
さらに
- iOSアプリ公式プログラミング言語の「Swift」
- Androidアプリ公式プログラミング言語の「Kotlin」
などのプログラミング言語も、世界的にスマホアプリ開発需要が高まっていることで、すでに海外のIT企業で利用が増えています。
今後日本でも、Swift・Kotlinの需要は高まっていくと予想されます。
Progate
Progate(プロゲート)は、無料からはじめられるオンライン学習サービスです。
PCブラウザやスマホアプリで学習できるので
- ソフトウェアのインストールや
- 複雑な開発環境の設定
などは一切不要です。
学習内容も、全15コース・82レッスンから自由に選べます。
いつでもどこでも好きなプログラミング言語の学習が可能です。
Udemy
画像参照元:Udemy
Udemy(ユーデミー)は、世界最大規模の動画プラットフォームです。
- 教えたい人(講師)
- 学びたい人(受講者)
をオンラインでつなぎます。
動画1本ごとの購入課金制で、一度購入すれば何度でも視聴可能です。
無料で見られる動画も豊富なので、経済的負担も掛かりません。
パソコン以外でもスマホアプリから視聴可能。
移動中やスキマ時間など、いつでもどこでもオンライン学習が受けられます。
エンジニアに質問し放題|プログラミング教室
現役エンジニアに直接質問をしながら学習したい場合は、プログラミング教室がおすすめ。
例えるなら「個別指導学習塾のプログラミング版」と考えるとイメージしやすいはずです。
ウェブサービスや動画を使った自主学習に比べて費用は掛かりますが
- 受講生ひとりひとりにあったオーダーメイド学習
- わからないときはエンジニアに何度でも質問が可能
といったメリットがあります。
特に、プログラミングの独学は大人でも95%が挫折するといわれます。
講師は受講生が挫折しないように
- 励ましやフォロー
- できたときに一緒に喜んでくれる
- わかるようになるまで丁寧な指導
など常に寄り添ったメンター的役割を担います。
CodeCampKIDS
CodeCampKIDSは、小学生・中学生のためのプログラミングスクールです。
学習コースは
- ロボットプログラミングコース
- Scratchプログラミングコース
- Unityプログラミングコース
の3つの中から学びたい内容に合わせて選択可能。
プログラミング初心者でも、楽しみながら学習することで自然にITスキル・プログラミング的思考力が高まります。
TechAcademyジュニア
TechAcademyジュニアは、小中高校生向けプログラミング教室です。
学習はすべてオンラインで行うので、自宅など好きな場所で学習可能です。
受講生のレベルに合わせて初級〜上級まで複数の学習コースを用意。
学習につまずいたときは先生へ何度でも自由に質問可能。
先生が授業を進める受動的な学習ではなく、自分で学習を進めるアクティブラーニング形式なので、自分で考える力が磨かれます。
まとめ|中学生のプログラミング学習は将来に役立つ
本記事では、中学生にプログラミング学習が必要である理由から、おすすめの学習方法まで解説してきました。
中学生がプログラミングを学習することで
- 受験が有利になる
- 自分でサービスを作れる
- ITツールを積極的に活用できる
といった直接的なメリットがあります。
また、学習によってプログラミング的思考力が磨かれることで
- 身の回りの問題解決ができるようになる
- 世の中の変化に対応できるようになる
というように、子どもの将来に役立ちます。
プログラミング学習はインターネットを使って気軽にはじめられますので、ぜひ興味・関心に合わせて選んでみてください。
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